[Live] The Chemical Brothers フジロックフェスティバル'07 2007.7.29

ケミカル・ブラザーズは、おそらくこれまで最も多くのステージを観たアーティストのうちの1つで、正直この年のフジロックでは全く期待していなかったアーティストだった。このステージを観たのも積極的な理由ではなく、ホワイトステージに出演予定のフィッシュボーンがキャンセルしたため、という非常に消極的な理由だった。

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[Live] Nine Inch Nails 東京ベイNKホール 2000.1.12

後にも先にも最も不安に駆られた、というか怖い思いをしたライブ。

この頃のNine Inch Nails は、最も緊張感あふれるアーティストで、シーン全体から注目されている存在だった。そして、このツアーは約5年ぶりの2枚組みの大作「ザ・フラジャイル」のツアーだったこともあり、期待が高まる一方非常に不安な想いをして会場に向かったことを覚えている

このツアーはベイNKホール3デイズの日程で開催されており、私が行ったのはその2日目でこれが大失敗。約10,000人収容の会場には、1,000にも満たない観客しか集まらず、会場全体が非常に寒々しい雰囲気で包まれていた。
ちなみに初日は大盛況、渋谷陽一がその様子を伝えてくれている。

「果たしてライブは開催されるのか?3曲で帰ってしまうのではないか」の不安がほぼ的中し、トレント・レズナーのパフォーマンスは頭から大荒れ。何度もマイクを上空5mほどの高さまで投げ出し、床にたたきつけ、客席に投げ入れた。水のペットボトルも何本も投げ入れた。他のバンドのメンバーに絡み演奏の邪魔をする姿は、完全にやけっぱちにしか見えない。

しかし3曲目を過ぎた辺りから徐々に演奏は安定し、結局2時間近くのセットをすべて演奏し終えてくれた。あの状況で最後までやり切る姿勢にプロ根性を見た気がする。

いま、Nine Inch Nails は大人になってしまい、ライブパフォーマンスにおいては非常に安心できるパフォーマンスを提供しているが、そう考えると非常に貴重な体験をできたと思い、今ではいい思い出になっている。

[Live] Bjork フジロックフェスティバル'03 2003.7.26

「2日目のビョークは今年のハイライトともいえる圧倒的なステージを展開、エンターテインメントと芸術性を見事に合体したパフォーマンスをあの巨大空間で実現する離れ技をやってみせた。フジ・ロック史に残るパフォーマンスだった。」(渋谷陽一)

生涯ベスト3に入る間違いなく入るライブ。これまで数百というステージを観てきたけれど、パフォーマンスとしては至上のステージ。
「柵の中で観た」というのは今でも自慢のタネだけど、間近でみるとヴォーカルの音域・音質を自在に操るパフォーマンスは正にアートそのもの。本当にステージ全体が1つのアート作品として完成されていた。

これだけの「本物」を体験してしまうと、その後触れた「紛い物」の醜さが一層際立って感じてしまうようになったと思う。

サポートにマトモスが参加していたのもツボ。

[Live] David Bowie 日本武道館 1996.6.4

最も敬愛するアーティスト、デヴィット・ボウイの初めてのライヴ。前座の布袋寅泰が片手を骨折しながら「Starman」をやって場の空気が凍りついたことが1番の思い出。

この頃のボウイは、80年代後期の転落を経て単に「終わった」アーティストという位置づけであり、このツアーのアルバム「outside」(てか続きはいつ出るのだろう)も当時ではまだ実験段階の音楽に過ぎなかったインダストリアル/デジロックな音で作られた作品であった為、ごく一部の評価は得たもののメディアからは完全に見切られた存在だった。

その後、グラムロックブームを経て、また彼を支えるフォロワーが増えていくことで今の安定した大御所のポジションに落ち着くことができたが、このツアーは本人にとって背水の陣で望んだツアーだっただけに、「All Young Dudes」はやるは「Lust for Life」はやるわで大盤振る舞いなライブだった。

結局前座と合わせて確か約3時間半のライブだったと思うが、ここまでライブを終えて幸福感に満たされたライブはその後経験していない。

[Live] U2 東京ドーム 1998.3.5

黄金のアーチが七色に光りだした瞬間、わらいが止まらなかった。

おそらく史上最も過小評価されたU2のツアーがこのPOP Mart ツアーだった。その理由はこのツアーと連動して発売されたアルバム「POP」の内容が、ボノも「ツアーのスケジュールを優先させる為、サウンドプロダクションの面で妥協せざる得なかった」と述べているように、ファンの期待にそぐわない内容だったからだ。

当時はデジタルとロックとダンスの融合が盛んに叫ばれていた時代で、「POP」も意欲的な取り組みが行なわれたが、10年経った今ではやはり作り込みが不十分だったことは否めない(と言ってもこのアルバムはその点を除けは決して失敗作ではない)。

そういったアルバムの失敗という先入観を受けて、このツアーに対する評価は非常に低くなっているが、高さ10メートル幅50メートルの巨大ビジョンと、マクドナルドのアーチをモチーフとした黄金のアーチ(実はスピーカーの役割も果たしている)の巨大セットは、数々のアーティストのステージを見てきた今となっては、やっぱり最高のステージだった。あと、ポップマートツアーで忘れることが出来ないエピソードとしては、停戦直後のサラエヴォにこのステージという「日常」を持ち込んだことだろう。

おそらく死ぬまでに「このライブを生で見た」と、1番自慢できるライブはこの日のライブだったことは間違いない。

[Live] TV on the Radio LIQUIDROOM 2006.7.18

間違いなく00年代を代表するアーティストでもあり、見せかけだけではない「オリジナル」であるからこそ可能な革新的な音づくりを実現している彼ら。初来日にあたるサマソニ05で見逃してしまったこともあり、待望の単独来日公演だった。

ステージも期待を裏切らぬ構成で、カオスティックな音塊を正面から放出され続けた90分間。残念なことに客席は少し余裕が見られたけど、「音楽の進化はここにある」と確信できたステージだった。

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Return to Cookie Mountain
TV on the Radio

by G-Tools , 2008/03/02

[Live] Arcade Fire 新木場スタジオコースト 2008.2.11

最近、音楽に飽きてしまったというか、かつての音楽に対する情熱を失っていたので、このライブについても、以前体験した「The Killers のいいパフォーマンスなんだけど物足りない」と同じ感覚に陥るのではないかと心配していた。

構成メンバー10人の大楽団の奏でる音楽は、一見カオスに見えるのだが骨格を成すメロディーラインが王道の流れを成すことで、飽きるどころかどんどん引き込まれていった。
メンバーの立ち位置や担当する楽器を曲ごとに入れ替え、いい意味でせわしなくライブは進行していったが、中だるみすることなく一気にラストまで疾走するステージを見せてくれた。

ただやはりなんと言っても曲がよい。決して革新的ではないけれど、聴く人を笑顔にするメロディーを恥じらいもなく奏でる大楽団。このアーティストがこの音楽を奏でる限り、何度もステージに足を運びたい。

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Funeral
Arcade Fire

by G-Tools , 2008/03/02

[Live] シガーロス 東京国際フォーラム 2003.4.15

おそらくこれが永遠の生涯ベストライブ。

このライブの後、フジロックのホワイトステージで彼らの演奏を見たが、この時の感動には全く敵わなかった。バンドが違うというより次元の違いを感じてしまった。
舞台が東京国際フォーラムということもあり、そのあたりの音響面での演出効果に多大なものがあったと思われるが、いくつかのキャンドルが立てられた薄暗いステージの上で、一音目が奏でられた瞬間から彼らの荒涼とした世界に意識を持っていかれ、そして何故かライブの間じゅう、家族や人生や世界のことをひたすら考えた。同行者も同じことを言っていた。

このライブは2作目の発表直後のライブであり、3作目のアルバムの発表時に雑誌のインタビューで、「開放された。幸せだ。」と語っていたが、3作目の完成までに叶わなかった彼ら、というより「彼」の抑圧された想いが鬱積し、あのステージを作り上げていたのだろう。「彼」には残酷な話だが、彼に犠牲になってもらってでも、あのステージはもう一度再現して欲しい。

そういえば渋谷陽一もだいたい同じことを言っていた。