2010FIFAワールドカップ南アフリカ 日本 vs カメルーン

6月14日(月) 2010FIFAワールドカップ南アフリカ
日本 1 – 0 カメルーン (23:00/フリー/30,620人)
得点者:39′ 本田圭佑(JPN)

「こんな試合が見たかった」。何とも無様で世界中のサッカージャーナリストから眠いだつまらないだと散々な言われ様をしている試合内容でしたが、「リアリズムの権化岡田武史ここにあり!」とマリノスで連覇していた頃のサポーター仲間に「マリノスのサッカー一番嫌い」と言わしめる、対戦していて何とも言えない気持ちにさせるあのサッカーがそこにはありました。

韓国との埼スタでのテストマッチの惨敗を受け、イングランドとのトレーニングマッチから急遽採用したアンカー阿部を置く形でこの日の試合も臨んだ日本代表ですが、監督就任時から目指していたハイプレスを軸とした「打って出る」超攻撃的な守備から、ブロックを形成して「相手を待ち構える」身の丈に合い、かつ指揮官が最も得意とする形で勝負に出ました。

本番直前の戦術の変更ですが、普段からJリーグを見ているサポーターたちは慌てません。
だって岡田さんはこれで勝ってきた、もしくは岡田さんに苦汁を飲まされてきていますから。
中盤や最終ラインでガチガチにつぶされ、ボールを奪われるとサイドから一気に攻め崩される・・・。思い出すだけで今でも腹が立ちます(笑)。

細かく相手のパスコースを切り、カメルーンなど遙かに及ばない野生の勘で、相手のチャンスの芽をつぶしまくるプロ13年目大ベテランの阿部(28)。阿部とともに日本の攻守の切り替えの中心にあった長谷部。ポストプレー、チェック、キープなど地味な仕事をカラダを張り淡々とこなし決勝点を挙げた本田。エトーの存在を完全に消し去った長友。長友とともに守備に奔走し左サイドを制圧し世界クラスのアジリティを証明した大久保・・・、とくかくすべてが選手が誇らしいです。

試合後オシム監督が、「もし明日の一面がすべて本田ということになれば、日本の未来は危ない。ヒーローは1人ではなく全員だ」。と語りましたが、この試合のゴールは、野球に例えるなら本田は決勝点となる得点でホームインした選手でしかありません。

松井が一対一の状況に持ち込めるきっかけを作った遠藤のパーフェクトなパス。そのパスを受けて左サイドからボールを持ち替えて松井が放った質の高いセンタリング。中央で自分より上背のあるディフェンス2枚とキーパーを引きつけた大久保のゴール前の動き。これらの要素に加え、この試合で徹底されたチーム一丸となっての守備戦術とそれに関わったチーム全員と彼らを指導した岡田監督や大木さんや大熊さんや小倉さんといったコーチ陣。そして、この日の試合を優位に戦えることができた最大の理由、高地トレーニングやコンディショニング、そして無策のカメルーンが愚かに見えるほど際立っていたスカウティング、そうした目に見えない準備を支えたすべてのスタッフたちによって本田はホームベースを踏めたと言えるのです。

この勝利によって日本は初めてワールドカップの参加権を得たと言えるでしょう。これまでは「参加賞」を手にして満足して帰国する単なる「お客さん」でした。ですが私たちはこれで初めて各国から参加国として見なされることでしょう。

この大会での私自身の個人的な目標は「1勝」でしかありませんでした。これが果たされてしまった今、私自身にその先の風景は何も見えません。ですが、私なんかと違って真のプロフェッショナルである彼らであれば、素人では思いもよらない何かを見せてくれるのかもしれません。

次の試合以降、ダーバンでのオランダとの試合は平地、ルステンブルクでのデンマーク戦は高地と、コンディショニングの調整が難しい環境の中での戦いとなりますが、最後まで悔いの残らない戦いをして欲しいと、それだけを願って応援し続けたいと思います。

4年前のドイツの地で味わった虚無感など誰が2度と味わいたいと思うでしょうか。

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