【J1昇格プレーオフ:決勝】 大分 vs 千葉

11月23日(金)
2012 J1昇格プレーオフ 決勝
大分 1 – 0 千葉 (13:05/国立/27,433人)
得点者:86′ 林丈統(大分)

2012 J2プレーオフ決勝

あと少しだった。あと5分だったんだ。

大分の選手は計5枚のカードを受け、スタミナの消耗が出足を鈍らせ、千葉の選手のドリブルを止められなくなっていた。米倉はPKスレスレの場所で後ろから引き倒され、谷澤のドリブルはサイドをえぐり藤田のドンピシャのヘディングを演出した。だが、藤田のシュートはゴールバーを大きく越えた。
そして、ふと気がつくと林が千葉ゴールに向って独走していた。副審は手を前方に伸ばしながら必死に林を追いかける。「林も村井もプロだな」そうつぶやいた気がする。

2012 J2プレーオフ決勝

落胆のレベルは10月14日の対戦の方が大きかった。だが2日経ってもどこか気が重くカラダのどこかが疲れているような感覚が全身を覆う。

今日この試合に負けたことより、私は5位に終わった事の方を問題にしたい。だが一方で、必ずしも今期は「昇格を目指さなければならない年であるべきだったか?」という疑念はぬぐえない。J2の当時弱小クラブの水戸を率いて好成績を収めた以外、木山監督には目立った実績がない。むしろ私は去年清水のゴドビ監督に事実上コーチ職を外されていたことの方がずっと気に掛かっていた。

2012 J2プレーオフ決勝

そういえば大分の監督の田坂も清水でコーチ経験を積んでいた。そう言った意味でもやはり木山監督に「1年でJ1昇格」をノルマに課すのは、条件を設定した方の能力を疑わざるを得ない。まあ、神戸GMはすでに退任されてしまったが。

噂ではシーズン前、複数年契約を嫌った千葉フロントの条件が飲めず、決裂した契約があったそうだ。千葉が指導者に複数年契約を提示できないのはミラー監督やクゼ監督の失敗が未だに大きく尾を引いているからだろう。

2012 J2プレーオフ決勝

ひょっとしたら、木山監督にオファーを出した際には、「昇格」は必須条件ではなかったかもしれない。しかし、山口智、兵働、田中、そしてシーズン中のレジナウド、ロボ、谷澤、高橋峻希と思いのほか補強が成功してしまい、選手層の増強とともにノルマのインフレが起きてしまったのかもしれない。

2012 J2プレーオフ決勝

だが、その選手補強も、藤田のバックアップ、守備的MF、CBという明らかに枚数が足りていない補強ポイントではなく、レジナウドや谷澤そしてロボといったポジション的にダブついている選手ばかり獲得し、結局木山監督の起用法をちぐはぐなものにさせただけだった。ロボなどは栃木が獲得し、昇格ライバルの勝点を削ってもらった方がよほど良かった。

2012 J2プレーオフ決勝

通常J2も3年目ともなれば「今年こそ!」という気持ちになるが、アマル、クゼ、ミラー、江尻、ドワイト、木山とほぼ毎年1人ずつ監督を取り替えているが、その度にサッカーが180度変わるため積み上げが全く無いのが現状だ。クルピに3年任せたC大阪などとは大違いだ。

2012 J2プレーオフ決勝

おそらく、スポンサーからの突き上げが厳しく短期的な目標に捕らわれ、失敗し続けているのがこの3~4年間だ。この負のサイクルを断ち切るためには、勇気を持ってスポンサーと話ができるフロントの体制構築が急務だろう。あとは、複数年託せる人材を選ぶことと支えること。サポーターの居残りに対して監督を矢面に立たせた今期の対応などもってのほかだ。

2012 J2プレーオフ決勝

木山監督に関しては、改善の兆しも見えるが、今期一度も逆転勝ちできなかった点がどうしても信用に足らなく感じてしまう。

2012 J2プレーオフ決勝

最後に泣き崩れその場から動けなくなった選手たちには、チャンスがあればJ1にドンドン出て行って欲しい。特に米倉。僕らと一緒にクラブの犠牲になる必要は無い。林と村井の活躍を見て今日はそれを学んだ気がする。

彼らが生きている世界は想像を絶するほど厳しく残酷で、彼ら自身が強くなる他に術は無いから。