ジェフはJ2では「ヒール」だ。それに気がつくまで時間が掛かってしまった。
かつてホームスタジアムが臨海で監督がなぜかイビチャ・オシムだったあのころ、ジェフというクラブは「清貧」という言葉がよく似合うクラブで、「金が取れる競技場ではない」と揶揄されたホームスタジアムや練習場、どれだけ美しいサッカーを披露していてもいつも閑散としてオシム監督を悲しませたスタンド、シーズンオフにはクラブの活動費の為に毎年主力選手が売られチーム戦力が弱体化する、そんな困難に常に立ち向かいながら何とか1つずつ勝利を収めていく「ベビーフェイス」の様なクラブだったと思う。
だがJ2に来てみるとどうだろう。自分たちよりも遙かに劣悪な環境や待遇にも関わらず、必死にボールを追いかけ明日をつかもうとする相手選手。かつての自分たちの姿に重ね合わせ、時には敵ながらひたむきなその姿に胸を打たれることもあった。
ひるがえって自分たちはどうだ。J2においては破格のチーム予算を組み居並ぶJ2規格外と言われる選手たち、スタジアムと練習場は今ではJリーグ全体でも有数の環境を有するまでにもなった。そして昇格は確実、時間の問題とも言われた。
いま、ジェフというクラブ、スタッフ、選手そしてサポーターの総体が、鏡の前に立って自らの姿にどれだけ驚くことだろうか。かつての精悍で無心でボールを追っていた姿はない。体中に贅肉がこびりつき、自分の身に起きた不幸な出来事はすべて他人の仕業によるものと責任転嫁・自己正当化することで濁っていく瞳、悪くなる目つき。おそらくなんとも残念な姿をした「ヒール」が鏡の前に立っているだろう。
この日の試合に関してもジェフは完全な「ヒール」であった。審判の笛は一貫してジェフ寄り。試合終盤まで怪しい笛はいくつもあった。ロスタイム4分なんて長すぎる。正直試合には負けたがこの日の勝者は北九州の選手とサポーターだ。
幸いにも試合後ジェフの選手とサポーターは必要以上に喜ばなかった。いや喜べなかったと言うべきか。
前線にヘディングをさほどストロングポイントとしていない青木孝太のワントップにし、そこに太田を中心にサイドからセンタリングを上げていく。谷澤の先制点に見られるように相手の弱点でもあり、非常に戦術的に利にかなった攻撃だと思うが、この戦術に正に最適なかつてのエースは実質的な戦力外通告を受け、ロシアの地にいるのだろうか。
過ぎたことを色々と穿り返しても仕方がなく、今は昇格への可能性があり続ける限り、選手もクラブもサポーターも一丸となって走り続けなければならない。最後まで諦めなければ最後に何かが起こるかもしれない。同時に自分たちで何かを成さなければ「何か」は決して起こりはしない。2008年の最終節に見たあの光景と今日の試合の勇人のゴールを見れば、僕らが今成すべきことは明白だ。
残り3試合。目の前の敵を倒すことだけ考えよう。「自分が最後まで走りきれるか」という己との戦いではない。これは自分たちよりも戦力が上の相手との真っ向勝負の戦いなのだから。