アレックス・ミラー監督の契約解除並びに江尻篤彦監督就任について
アレックス・ミラー監督は救世主であり、一生忘れ得ぬほどの恩人であるという気持ちは決して変わらない。
だが残念なことにミラー監督の頭の中は最後まで「プレミア・リーグ」に置き忘れられていたままだった。結局のところミラー監督が実行したのは、プレミアリーグの「フットボール」フォーマットをそのまま日本サッカーを押し込んだだけであった。つまり「キックアンドラッシュ」と呼ばれる英国フットボールをバックボーンにしたスタイルであった。さらにこのスタイルは、リバプールにおけるトーレスやジェラードの様な「世界基準での突出した個の才能」の存在を前提としていた為、監督の思い描くサッカー像と現実との乖離が成績低迷という結果を生み出していたように思う。
ミラー監督のサッカーの特徴をひと言で言い表せばそれは「勢い任せ」だった。「ハイプレス」というキーワードもあったが、この言葉の方がミラーサッカーの実態を表現していると思う。センターハーフの選手が相手ボールを追いたて、相手ボールを奪った瞬間からゴールまでの最短の選択肢を選び、とにかく勢いに任せて突っ込んでいく。中盤で手数を掛けてボールをつなぐということを極端に嫌い、前線への放り込みの「正当性」を信じて疑わない、そんな淡白なサッカーだった。
そのためジェフのサッカーは意外性が全く感じられない愚直なまでに単純なスタイルとなり、相手選手から「やりやすかった」とコメントされてしまうほど非常に相対しやすいスタイルになってしまった。最後の意外性の部分は「突出した個の才能」に頼らざるを得なく、かろうじて深井が持つその才能によって成り立っていたというのが事実だろう。
だからといって私はミラー監督を無能だとは全く思っていないし、ネガティブなイメージを今でも持っていない。監督は試合後のコメントで常に「選手のインテリジェンスが」と口にしていたが、本来各自の判断で構成されるべきであると監督が認識していたフィニッシュに繋がるイマジネーションやアイデアは、各選手の責任下において「各らのプラン」をもっと実行してもよかったと思う。
だがやはり日本サッカーにおいてこの部分は、「指導されるもの」であり、「指導者の指示」の枠を超えようとしない日本人の民族性も相まって、ミラー監督には理解されないまま最後まで来てしまったように思う。
個別のネガティブなポイントを挙げていくと、コンディションを優先しすぎて週休2日(日曜と水曜が休み)を徹底したし、選手の自主練も原則禁止していた。また、練習のメニューも対人練習はあまり行わず、トレーニングマッチは皆無だった。
試合においても1点先制した時点で自陣に引き篭もり、ひたすら相手の攻撃に耐える姿が目立った。とにかくセカンドボールを拾われ相手に攻め込まれ続ける姿を見るのは、非常にフラストレーションが溜まった。コーナーキックの際にペナルティエリアに常に全員戻るスタイルも違和感を感じたし、キックボール直後のマイボールは必ずセンターバックから前線に蹴り出し、ほぼボールを捨てている様な格好になっていて非常に残念な思いをした。
リバプールの試合を見ると同じようなサッカーをしているので、半分諦めながら見ていたがやはり最後までしっくりとはこなかった。
とはいえミラー監督には、「現役バリバリのプレミアの監督(コーチ)が来るとどうなるのか?」という実験を楽しませてもらえたし、ジェフ千葉というクラブというよりも日本サッカーにとって、プレミアのサッカーやおそらくセリエAのサッカーは決して自分たちのものにできないという教訓を得ただけでも、私は非常に有意義なこの1年だったと思う。
368 thoughts on “アレックス・ミラー監督の契約解除”
Comments are closed.