情報革命バブルの崩壊 (文春新書)
山本 一郎
2年前から言われていたこととはいえ、奇しくも朝日新聞の赤字突入のニュースが現実のものとなった絶妙なタイミングで上梓された「インターネット」が登場してからの15年間を一度総括するにあたって最適な1冊。
特に「第一章 本当に、新聞はネットに読者を奪われたのか?」、「第二章 ネット空間はいつから貧民の楽園に成り下がってしまったのか?」を読むだけでも買う価値がある。それ以降は著者のブログや過去の著作に目を通していれば新しい発見はないのだけれど、これから起こり得る日本の情報革命ビジネスの象徴的な存在のソフトバンクに何が起こるのかを適切に書き記している。
新聞社のコンテンツ生産能力は、やはりすばらしいものがあるし、この本で語られているようにネット上に無料で流すことで自らの体力を蝕み、かつ、マーケットを「見えている!」と強情をはり全く無視する姿勢を取り続けるのは、やはりナンセンスとしか言い様がない。
それこそ情報通信技術を「使ってやって」、より専門性が高く通信社とは違う新聞社ならでわの高付加価値なサービスを提供することは可能だし、そこには潜在的ニーズが眠っている(もしくは現在は無料で享受されている)はずだ。
なんだかんだ言ってGoogle はアドセンスだけだし、正直、当常時のインパクトに比べれば検索能力は伸びているとは言い難い。とてもではないが情報通信産業はこの本で語られるように成長産業とはいえない。
情報通信産業はすっかりインフラとして「落ち着いて」しまって、今後の医療、エネルギー、環境、農業・食品、そして軍事産業に比べれば斜陽産業であることは間違いなく、過度な期待と資本を投じることで、そこに成功と幸せが返ってくるとは、私も全く思えないのだ。