【第88回天皇杯4回戦】広島 vs 東京V

11月2日(日)第88回天皇杯4回戦 広島 vs 東京V(13:00/西が丘/5,411人)
得点者:89′ 高柳一誠(広島)

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残り7節を残しての史上最速でのJ1昇格を決めた広島と降格争いに片足を突っ込んだ状態の東京ヴェルディの争いは、チームの今の勢いをそのまま現した結果となった。

今期広島はJ2にいたものの、ペドロヴィッチ監督を中心にチームの結束力は硬く、何より組織力のクォリティはJリーグ全体でも1、2を争うクォリティを誇っている。また、昨期降格の原因の1つであった最終ラインに対する不安も、ストヤノフのチームへの融合や槙野、森脇の成長により払拭された。このようにチームの充実度が非常に増していただけに、今期このチームがJ1で戦えなかったことは残念でならない。

それだけにこの試合は、広島がJ1の東京Vに対してどれだけのパフォーマンスを発揮することができるのか非常に注目していたゲームだった。事実、会場には、オシム監督とその付き添いでアマル元監督、そして岡田監督も視察におとずれた程だった。(ジェフサポ的には、「ストヤノフとアマルが同じ場所にいるのは大丈夫かな?」と余計な心配をしてしまった。)

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ある程度広島が東京Vを今のチーム状態の勢いで圧倒すると予想していたものの、広島の支配率が7割を超えてしまうほど差がつくとは考えていなかった。
特にゲーム序盤、東京Vは激しく縦のポジションチェンジを繰り返しあらゆるポジションの選手が攻め上がってくる広島の攻撃に全く対応することができなかった。
だがとても最終ラインの選手とは思えないボールの扱い方をする槙野が何度もフィニッシュの場面に顔を出していたように、あれだけ「ボールと人が動くサッカー」を高いレベルで体現されてしまっては、守る方は苦労して当然だと思った。

象徴的だったのは、低く鋭い縦のロングボールが狭いエリアであっても簡単に通ってしまうシーンが数多く見られたことだ。前線の平本、飯尾、ディエゴの守備が連動性を欠き後方の選手が次々と正確なフィードを前線に供給し、逆に広島の前線にボールが入るポイントで、菅原をはじめ東京Vの選手はボールの入るポイントを効率的に見極めることができず、この状況を招いたように見えた。

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後半、ディエゴの軽率なファールから東京Vが1人少ない格好でゲームは進んだが、東京Vは自陣で守りに徹したことで、逆に広島はパスの出しどころを失い、結果的にボールを回させさせられる格好になった。

ボールが入るポイントの選手に対し、タイトなマークを付けられることでリズムとそして攻め手を失うことは、2007年シーズンの千葉の最大の課題であったが、広島はこれを裏に通すボールを多用することで1つの解を示していた。こうして広島はかなりのチャンスを生み出していたがゴールを割ることは出来なかった。

こうなると、これに加えペナルティエリア内・付近での1対1の仕掛けが徹底(そしてカウンターのリスクを克服)することで、また1つ上のレベルのサッカーを実現を見出せると思うのだが、この日の広島も後半のほとんどの時間を2007年の千葉のように、もどかしいパス回し「アリバイだけのポゼッションサッカー」でただただ時間を費やしていった。

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この膠着した状況を打破したのが、千葉からの期限付き移籍で在籍している楽山の「ペナルティエリア内への仕掛け」だったことは非常に興味深い。
交代後いい形でゲームに入り、相手キーパーのナイスセーブで阻まれた非常に惜しいシュートの後に、ゴールに向かって切れ込んだドリブルから決勝点のアシストは生まれた。楽山が出場した試合でバックパスを1本も出さなかった試合は始めてかもしれない。千葉でどうしてこの積極性を「試合中に」見せないのか非常にもどかしいものがあったが、このプレーを見ることができたのは非常に価値があった(試合終了後の小さなガッツポーズはカッコよかった)。

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広島のサッカーは、やはり「オシムDNA」を痛烈に示したサッカーであり、来期J1でどこまで出来るかというのは大変興味深い。ただ、後半攻めあぐんだ場面が目立ったように、あの状況を打破できる「柱となるFW」の獲得は必須であろうと思った。高原やヨンセンなどは非常にフィットしそうなのだが、外国人枠が2~3は空いていると思うので、そのあたりを有用に使って欲しい。

それにしても、ストヤノフに結城に楽山に寿人に広山。そしてイビチャにアマル・・・。どんな千葉の同窓会ゲームなんだか(笑)。あと、ハーフタイム中にロッカーそっちのけでイビチャに駆け寄るペトロヴィッチは非常に微笑ましかった。