東日本大震災 ボランティア活動の記録@岩手県山田町 2011.9.23-25

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今回は初めて災害ボランティアに参加した際のツアー「東京と岩手を繋ごう」企画のボランティアツアーで岩手県の山田町へ1泊3日の日程で参加してきた。ツアーの構成は「山田町での災害ボランティア活動」と震災後の観光客減に苦しむ「岩泉町の龍泉洞エリアを観光支援」という構成だ。


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リアス式海岸の美しい景色を背景に、今回私は大きな瓦礫除去が済んだ住宅地の最後の仕上げ作業を行った。具体的には生い茂った雑草の草刈り、ガラスの破片やこぶし大以下の瓦礫の片付けなどだ。

住宅地の片付けのピークを越えつつあり、最近はハードな瓦礫撤去はヘドロかき作業の割合が減ったことで(とはいえ住宅地以外の田畑や山林や沿岸部など「先送りされた場所」はまだまだこれから)、目に見えてハードな作業が減り、意を決して現地に乗り込んだボランティアを落胆させることがある。

約30人のボランティアが1日がかりの作業は、1人でやれば1ヶ月ぶっ通しでようやくできる作業量。それだけの時間を地元の方が他の復旧作業や仕事などの通常生活に充てられるのであれば、それだけで十分に復興支援に直接繋がる作業だと私は理解できる。

山田駅

どうしても初めてボランティアに参加された方などは、瓦礫撤去などの過酷な作業を通して復興支援に直接携わった実感を得たいという思いが強くなりがちだが、単に被災地にボランティアとして緊張の面持ちに満ちたその表情を見せるだけでも、被災県の方々が常に恐れている「東京にもう忘れられているのではないか」という不安をぬぐい去ることに貢献していることに胸を張って良い。

何より被災地の状況を自身の体験として取り込むことで、メディアが伝えきれない被災地の姿やそこからの復旧・復興の困難さを正確に把握でき、帰宅後に家族や同僚などの身近な人びとに対して「新鮮で正確な情報」を口コミで伝え、課題意識をより多くの人と共有し続けることは何よりも実施が困難で効果的で、かつ有益な復興支援活動だ。

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「復旧のゴールはいつ?」とたまに考えることがある。
かつてあれだけ山積みになっていた瓦礫が片付けられ、土地が更地になっていると「もう作業はない」と錯覚しがちだ。

最近私は「復旧のゴールは2011年3月11日14:45の状態に戻ること」と考えるようにしている。確かに津波被害を受けたことで同じ場所にもう一度家を建てることが難しいケースもある、そして失われた命、それによって傷つけられた心をはじめ二度と戻らないものは無限に存在する。

だが、少なくとも14:45までと同じ心持ちや食卓や茶の間に流れる空気感を再び直接被害に遭われた方々が取り戻すまでが復旧作業なんだと考えるようにしたい。

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だが言うのは簡単だが実現することは非常に難しい。そして私たちボランティアというか生活者1人ひとりが自分の生活を維持したまま、週末の余暇の時間を被災三県での災害ボランティア活動に充てるのとは次元が異なる。

全ての人が自らの仕事を通して被災地を支援できる立場にはないだろう。自ら率先して東京から被災地を直接支援する自信と行動力と一歩目を踏み出す勇気がなくてもそれは仕方がない。

だけど私は誰もが簡単に「生活意識」を変えるだけで、東北を復興支援し、そして震災以前から東北地方を始めとする日本の「地方」が抱える課題の解決に大きく貢献できると考えている。

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それは「価格至上主義」の経済価値観と決別することだ。

東日本大震災以降の災害ボランティア活動で東北を訪れる度に、地震・津波による被害の他に、震災以前よりこの地を苦しめている「地方の衰退」という問題を目の当たりにしている。

地方衰退の理由はいくつも挙げられるが、特に第1次産業の農業・水産業に関しては、安価な輸入作物に押され産業規模が縮小傾向にあることは疑いようがない。

バブル崩壊以降、「価格破壊」の名の下に少しでも安い商品を買い求めることは美徳とされた。近年ではさらにそれが加速し、ゲーム感覚で1円でも安い商品を手に出来る者が「勝ち組」と称され、「価格」というもの差しでしか商品の善し悪しが図られていないのではないかという錯覚に陥る。

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こうした私たちの「価格至上主義」から生まれたニーズは、流通チェーンなどの圧力に形を変えて、農作物・水産物の生産拠点である東北の生産者たちを苦しめてきた。

この構造は311以降も変わることはない。「東北のモノを買おう」と東北応援キャンペーンが展開しているが、この(特に盛り上げ役のメディアの)熱量がいつまで継続するかは分からない。だからこそこの復興支援を契機に、私たちは、少しでも「お得な」商品に一喜一憂するのではなく、広い視野を持って情報化時代にふさわしい情報収集と商品選択を行い「価格至上主義」とは決別すべきではないだろうか。(このあたりの考えについては「やまけんブログ」で有名な山本謙治氏の「日本の「食」は安すぎる」が詳しい)

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また同様に観光に関しても海外旅行から東北を中心とした(この日お話を伺うことができた早野商店の早野さんも提言されていたが)長期滞在型の旅行にシフトすることも有効だろう。

確かに沿岸部は津波の爪痕が色濃く残り、まだまだ純粋にバカンス気分で訪れることが難しいが、このリアス式海岸や山間部の山々の美しさ、そして内陸部の遠野・花巻・平泉といった歴史ある観光地を持つ岩手県のポテンシャルは非常に高い。

11月の頭に紅葉のピークが訪れるらしいので、いつもの日光より少し足を伸ばして岩手観光を計画してみるものどうだろうか?