KALA / M. I. A.

80年代末から90年代までの音楽は、「最先端であること」というのは、いかにデジタルを取り込むか、というテーマに集約されていたように思う。
だが21世紀を向かえ、テクノロジーを導入することによって得られる革新性が踊り場に出てしまったことで、多くのアーティストは道を見失っているように思われる。また一方で、過去の自分の作風に回帰する現象が多く見られたり、テクノ・レイヴ界隈のアーティストが行き詰まりを見せているのは単なる偶然ではないはずだ。
BATTLES などのように音楽に対するアプローチを変えることで新たな可能性を示しだしているアーティストが指示を集めるというケースは目にするものの、大枠においてはこのことが当てはまるように思う。

このデジタル化とは別に音楽を進化させる手法として、民族音楽をエッセンスとして取り入れて行くという手法が存在し、近年ではエレクトロニカ・ムーブメントの一環としてアイスランド出身のアーティストの活躍が目立ったが、テクノロジーの進化がこれ以上見込めない場合(おそらくより生理学的な進化はあっても音声コンテンツとしての進化はない可能性が高い)、このジャンルのボーダレス化的なアプローチをどの様な形で推し進めていくのか、というのが「最先端の音楽」というものに課せられていくテーマのように思う。

というか、そもそもなんでこんな今更なことを書いたかというと、M. I. A. の新作を聞いて、「これは今の時代の最先端かもしれない」と思ったから。鳴っている音にはさほど革新性はないのだけど、ケバくて下品で安っぽい、そんな音だけど、音の向こうにひとびとの日々の暮らしが透けて見える。そんなごった煮状態な音楽に21世紀的なものを強く感じてしまったから。

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カラ KALA
M.I.A.

by G-Tools , 2007/08/13

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