いま、音楽は、こころないひとたちによって「表現」はおろか「商品」ですらなく単なる電気信号と化しているけど、最後にリック・ルービンだけは信じられる。そう改めて思い起こさせてくれた、彼がプロデュースしたジェイコブ・ディラン(つまりボブ・ディランの息子)のソロデビュー作。
ジョニー・キャッシュとの仕事でもそうであったように、アコースティックによる弾き語りスタイルを中心としたムダを一切排した音づくり。向き合う対象は音楽しかなく、日に日に音楽が死にゆく現代において一筋の光明をみた気がした。これは傑作と言われても仕方がない。
ジェイコブは自身のバンドウォーターフラワーズとして今年のフジロックに登場するが、是非ともアコースティックセッションで構成されたステージを展開してほしい。クロージングでソロとしてでもいいけど。