何故ジェフは敗者となったのか?2010年シーズン総括・中

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何故ジェフは敗者となったのか?2010年シーズン総括・上」の続きを少し書きました。2ちゃんやら各所で出尽くしている内容なのでジェフサポにはあまり面白くない内容になっているかもしれません。本気でいつも以上に自信がないです(笑)。

バルセロナのサッカーを目指す

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記者「ミーティング等でもよくバルセロナの映像が使われると思うのですが。」
巻誠一郎「ほとんどバルセロナですね。9割9分くらいかな(笑)。」

江尻監督には夢があった。世界一のサッカー、バルセロナのサッカーを自分たちジェフユナイテッド千葉のものにするのだ。2010年シーズンの新体制をスタートさせるにあたり江尻監督は、バルセロナのサッカーを実現するために大切な要素となる「ボールを受ける動き」について独自の理論を持つ米田徹をコーチに迎えるなど、本気でジェフのバルサ化を推し進めようとしていた。

一方で「なぜバルセロナ?」という疑問も浮かぶが、かつてアルビレックス新潟、五輪代表でタッグを組んでいたバルセロナにコーチ留学経験のある反町隆監督から影響を受けたと考えれば素直に納得することができた。たしかに、あのスタイルを恒久的に自分たちのスタイルとしてモノにすることができるのであれば誰も文句は言うまい。

K’sデンキスタジアム

しかし1年とは言わないまでも数年で実現できるのであれば世界中の全てのクラブが、「観客を喜ばせ、しかも勝てる」バルサのサッカーを目指すはずである。バルサというクラブが数十年に渡って「ブレずに」積み上げた「資産」だからこそ価値が宿るのであって、バルサのスタイルを自分たちのものにすると言うことは「長い旅に出る」ということを意味するにも関わらず、「昇格とスタイル確立を1年で」と結果を焦ったジェフはバルサのそれとは似ても似つかない残念なスタイルのサッカーを晒すことになった。

その上、結果的にシーズンの1/3を残した頃からようやくバルサのサッカーを諦め、勝点を上げることを最優先に考えたサッカーに切り替えるのだが、それは後方から相手の裏のスペースにFWの選手をひたすら走らせる、バルサのサッカーとは180度志が異なるサッカーだった。

確かに「昇格」を目標に掲げその為の体制を用意したからには、勝点にこだわるべきだし、高すぎる理想のサッカーには反対だったが、この極端な方向転換にはひどく残念な想いをした。

ただし、この点については「四兎を追い三兎を逃す」で触れたように、「長い旅に出る」という江尻監督の決意に本気で向き合わなかったフロントの責任が重い。西部氏がラジオ番組で語ったように「江尻監督をユース監督にして毎年1~2人ずつトップに上げて、5年でスタイルを確立する」というプランを共に描けなかったことが何とも残念だ。フロントは経済環境を理由に挙げるだろうが、これであればサポーターは必ず付いてきたというのに・・・。

江尻監督の勝負師としての資質

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先日亡くなった父親は星一徹のような人で、殴られながら「人には 嘘をつくな、真摯にしっかりと受け答えをしろ。自分が思ったことに対して裏はない。いろんな計算をするな」というふうに言われて育ちました。こういった場 で、ストレートなことを言ったことは事実です。監督としてもっといろいろ頭を使えと言われるかもしれませんが、私は私の生き方でこれからも曲げるつもりは ありません。

最終節の試合後のインタビューで江尻監督はこうコメントした。

かつてイビチャ・オシム監督がメディアや選手・クラブ関係者に直接的に真意を悟られまいと、意図的に「ことわざ」や比喩表現を用いていた。オシム監督はユーゴ崩壊の課程や長い指導者としての経験の中から言葉の力が持つ強さや怖さを知るだけに、特にその傾向が強かったが、やはり勝負師たるもの「真意」を悟られないように振る舞うべきであって、その意味では江尻監督は勝負師としての資質に欠けていたと言わざるをえない。

実際、試合中の采配も「真っ直ぐ」過ぎた。「○○と見せかけて逆の逆を突く」というプランもほぼ皆無で、いつも「トレーニングを積んで自分たちの能力を高めれば、相手を乗り越えられる。乗り越えられないのは努力が足りないからだ」という非常によく言えば一本気、シビアに表現すると短絡的なものだった。

正田醤油スタジアム群馬

また、このポイントには別の問題が透けて見える。「対戦相手」が軽んじられすぎているのだ。勝負事は相手あってのものであるはずなのに、「トレーニングすれば乗り越えられる相手」としか江尻監督は対戦相手を見ていなかった、ともすれば見下していたように思う。
それに対し対戦相手の監督は適切にジェフに対する研究を行い、きっちりとジェフに土を付けていった。ジェフを破ったチームは柏・甲府・福岡の昇格チームだけでなく、徳島・岡山・水戸・札幌・岐阜・横浜FC・草津と計10チームにまんべんなく負けていることからも単にジェフが「弱かったから負けた」ことが顕著に表れている様に思う。

ちなみに、ホーム13勝3敗2分、アウェイ5勝8敗5分の計18勝11敗7分とシーズン前に神戸TDが挙げた昇格ライン22勝6敗8分に遠く及ばず、アウェイでの戦績の悪さと11敗という負け数の多さは、シーズン前に「規格外の戦力」と称された姿は見る影もない。